第2章 メイプルシロップの国

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そしてアマルティアは“魔を統べる者”などではなく“魔”に怯える少女。 事実を知った時、俺はアマルティアを討ち滅ぼすべき存在ではなく全力を尽くして守り抜くべき存在だと認識した。 「でもさ、これもアリだろ? 黒いやつ」 「そうね。迷うわ」 アマルティアが殺されなくちゃならない理由って何だよ? 俺の問いの答えは明白。 アマルティアが“魔を統べる者”だから。 「なんかもうめんどいし、全部買っちまうか」 「えっ? 今選んだの全部?」 “魔を統べる者”が世界に“魔”を生み出したから殺す。 そうすれば世界は平和になる? 何故平和になる? “魔”が世界から消えて無くなるからだ。つまり“魔”から生まれる魔物が消えるから。 「これ以上絞り込めねーだろ?」 「ホントにいいの?」 直接的に被害を出しているのは魔物だ。そして魔物を生んでいるのは“魔”だ。 “魔を統べる者”ではなく、“魔”なのだ。 俺は考えた。“魔を統べる者”と“魔”を切り離す方法を。 その方法さえ見つかれば誰もアマルティアを殺そうとなんて考えない。 「いいんだよ。つか結局黒いヒラヒラばっかたな」 「……そうね。でも全部わたしの好みだわ」 そして見つけたんだ。 “魔女”アマルティアを“人間”アマルティアにする方法を。 「そうえいえば、あなたの服はいいの?」 「俺のはあるからいいんだよ。鎧の下に着てるからあんま見えないけどな」 簡単だった。 アマルティアを思い切り幸せにしてやればいいのだ。 “魔”は人の心、特に負の感情に強く影響を受ける。この世界にはびこる“魔”はアマルティアの負の感情と結び付いているのだ。というか、両者の結合が強すぎて“魔”とアマルティアの負の感情はもはや一体化していしまっている。 「それじゃあお言葉に甘えて買ってもらうことにするわ」 「1着くらい黒じゃないの買ったらどうだよ?」 「それは今度にするわ」 アマルティアの心が負の感情に支配されやすく、憎しみが増幅されて現れたりするのはそのせいだ。 だから、アマルティアの心を正の感情で満たす。 そうすることで負の感情を、ひいては“魔”そのものを打ち消す。 それが俺の導き出した答えだ。 待ってろアマルティア。俺が助けてやるよ。
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