第一章

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クライシスside 外から聞こえる鳥の鳴き声を聞きながら気持ちの良い朝を迎える。 昨日とは違い、夢を見ることなくぐっすりと眠る事が出来た。 昨日は週に一度の森への食料調達だったが、予想外の事が起こりさすがに疲れたようだ。 こんなに清々しい朝は久しぶりだ。 俺は、寝ていたベッドから起き上がり、カーテンを開けた。 日の光を浴び、まだ寝ぼけていた頭が覚醒する。 脳が動き出すと同時に、昨晩家に連れてきた少年のことを思い出した。 着替えたら、少年の様子でもに見に行くか。 解毒は昨夜のうちに終わったが、まだ毒による身体への麻痺はあるはずだ。 多分、まだ体力が万全でないのも重なり、動くことは出来ないだろうな。 俺はクローゼットの前まで行くと、適当に服を取り出した。 ローブの中はシャツとジーパンと楽なものを着て、上にはローブを羽織る。 ローブの色は、昨日と同じベージュ色だが、室内用であるだけあって、外出・戦闘用より性能は劣る。 ローブを羽織った後、フードを深く被る。 そして、白の手袋を手に嵌めれば、支度は完璧だ。 支度を終えた俺は部屋を出て、昨日少年を寝かせた隣の客間へ向かう。 客間のドアを開けて中へ入り(…あっノック忘れた)、少年のいるベッドへ向かった。 近づくと少年は目を覚ましているようで、こちらの方へ視線を向ける。 どうやら、予想した通り身体を動かすのは辛そうだ。 少年のもとへ行き、少年と目線が同じくらいになるようにしゃがむ。 しゃがんだところで、少年が言葉を発した。 「此処は何処ですか?俺は如何してここに?」 少年の疑問に答えようとするが、少年にこの声は届いていないようだ。 偶にこの様な事があると、本当に透明人間になってしまったんだと感じる。 とまあ考えていても相手に悪い(常識的に)ことだろうなので、魔術を使うことにする。 [テリア・セラス] 聞こえていないだろうが、声を潜めて魔術を発動させる。 『テリア・セラス』通称、『言語通訳』 この姿になってから、不便に感じて作ったモノ。 効果は、伝わらない言葉を一定時間のみ訳する。発動条件は一対一会話のみ。 魔術で作った割に制約が多いのは、他に使われないようにするため。 人間がもしこの魔術を知ったら、悪用するかもしれない。 なので、念の為に魔術にし、古代語であるティアンス語にした。
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