第一章

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「…聞こえてる?」 魔術を使い、相手に俺の声が聞こえる様になり、初めて発したのがコレだ。 相手の問いとは全く関係のない言葉。 何故、この言葉を最初に発したのか? それには、ちゃんとした理由(ワケ)がある。 まあ、理由もなしにこんな言葉を発する奴は、いないだろうが… この「聞こえてる」には、魔術がきちんと発動したかを確認するためのものだ。 きちんと発動していなければ、何を話しても意味がないからな。 「聞こえていますがどうかしましたか?」 良かった。 どうやら、魔術は成功しているようだ。 ほっと、安堵のため息を外に漏れないように心の中だけで吐く。これは聞こえたら不味い。後々、面倒になるからな。 とりあえず、少年の質問には「なんでもない」と曖昧に答えておく。 本当の事を言えば、疑問に残る。そして、後から大変になるのは目に見えている。 まぁ…正直に答えるのははっきり言って、気が乗らない。 折角、魔術(しかも、古代語の一番解読されていない言語)を使ってるのに、人間に知られたらこの努力が水の泡だ。 少年から聞こえたのが、納得のいかないようだったが無視しよう。 「質問、答えていなかったね。如何して此処にいるかだったけ?」 間違ったらいけないと思い、少年に尋ねる。 と言うのは建前で、ただ単に話を逸らしたかっただけ。 こんな短時間で、少年が訊ねたことを忘れるはずがない。 少年に聞いてから、数分の時間が経った。 少年は聞こえていなかったのか、何かを難しそうに考えている。 さらに少したっても様子が変わらないため、少年に声をかけて見ることにする。 「大丈夫?」と声をかけてみると、抜けたような声の後、少し焦った様子で呼んだ理由を聞いてきた。 それに、先ほどと同じように尋ねると、肯定の返事が返ってきた。少年の様子が聞く体制に入った(と言っても、まだ起き上がれないが…)様子を見ながら、口を開いた。
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