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「それって、なに?」
「これ?これは、この森で移動するためのモノ。詳しくは教えられないから」
不思議そうに、俺の手にある「巻物」を見るベクルにそう言う。
何か言いたそうだったが、俺の「詳しくは教えない」の言葉に、何も聞いてこない。
…まあ、聞いてきたとしても答えないが。
魔法は発達しているが、魔術はそこまで世界に浸透していない。
魔法と魔術を合わせた呼び名…魔導は知っているものがいるかすら分からない。
そんな世界だ。
もし、俺が「魔術陣の知識を持つ」と相手に教えたらどうなるか?…考えなくても分かるだろう。
俺はこの世界の奴から追われ、捕まったら研究組織に監禁されるだろう。
そして、一生外に出る事が出来なくなる。
何故なら俺は…
やめよう。俺が何も話さなくなったから、ベクルが心配しているような表情をしている。
「そろそろ行くか?お前の迎えが待っているかもしれないからな」
「え?うん。お願いします」
俺の様子に戸惑いの表情ベクルだったが、俺の少し強めの口調に何も言わなかった。
俺は、手に持っていた「巻物」を客間の床に広げた。
巻物が広がり現れたのは、複雑に組まれた幾何学模様。素人が見たら、これで完成しているようにに見えるほど、複雑に入り組んでいる。
この魔術陣に足りないものは、1つだけ。
それは、この移動系魔導陣の到着地点。
何処に、運ぶかを決める一番重要な部分だ。
魔術陣に、到着地点の場所を魔力で書き込めばこの魔術陣は完成する。
しかし、魔術陣には厄介な点がある。
それは、現代文字で書き込むと全く違う場所に飛ばされてしまうという事だ。
確実に移動するためには、古代語の中のフェリエ語で書きこまなくてはならない。
書き込みが終わり、間違いがない事を確認し、ベクルの方を向いた。
「準備は終了したから。今から行くぞ」
「うん。お願いします」
「ちょっと揺れるぞ」とベクルに伝える。
そして、風魔法『浮遊』をベクルに掛け、魔導陣の上に運んだ。
忘れ物がない事を確認し、ベクルに一言「行くぞ」と、かけてから魔術陣を発動させた。
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