第一章

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一瞬、視界がぶれたかと思うと森の入り口に転移していた。 森の入り口といったが、入り口の少し手前である。 ベクルが呼んだ人が来ていた時のことを考えて、少し離れた場所に転移先を指定した。 「いきなり森の中から転移して来る」なんてこと実際はあり得ないからな。 その位の常識はある程度わきまえている… 少し歩くと、樹が徐々に疎らになってきた。 もう少しで、森の入り口に出るようだな。 「もう少しで着くぞ」ベルクに伝え、ゆっくりと歩を進める。 --------- 森が開けたところに、1人の人間がいた。 公式ギルドのローブを纏いフードを被っている人物は、ベクルの呼んだ迎えだろう。 此方の方を見ていたその人物は、ベクルの姿を見ると此方に歩いてきた。 「ベクル!?」 ベクルの状態を見て驚いた様子のローブの人は慌てた様子でこちらに走ってきた。 声からして男だろう。 「マスター!何故!?マスターが…」 「此処まで来れる奴は、ほとんどいないからな。俺が、来た方が早かったわけだわ。それに、用事もあったしな。それにしてもお前…」 ベクルにマスターと呼ばれた人物は、ベクルの様子を改めてみて苦虫を潰したような表情をした。 仕方がないか。 ベクルの様子は、最初より体調は良くなってきてはいるが、まだまだ怪我人だからな。殆ど身体は動かせないし、顔色もまだ悪い。 こんな状態なんだ…そんな表情をするのは普通だろう、多分。 俺に人間の普通はよく解らないが… 「お前の事は後から追々聞くとして、此方の方は?」 マスターは警戒したような様子で、俺を見ながら訊ねた。 …呆れる。 今になって俺を認知したのか? これが本当に公式ギルド『紅蓮』のギルドマスターか? いくらベクルが心配だとしても、周りへの警戒は怠ってはいけないだろうが… しかも此処がどんなに危険な場所か分かってるはずなのに… 「あっ…えっと…この方は俺を助けてくれた方で、クライシスさんです」
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