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浪士のひとりが背後で叫んだ。
最初に言いがかりをつけてきた男かもしれない。
千鶴は前方に立てかけられている材木の向こう側――天水桶(てんすいおけ)が作っている暗がりに素早く飛び込むと、身を隠した。
(見つかったら、殺される――!)
息を潜めても上下する肩を鎮めるように、小太刀の柄(つか)を握りしめる。
「逃げ足の早い小僧だ」
「まだ遠くへは行っちゃいねえ。捜せ!」
抜刀(ばつとう)した浪士たちがゆっくりと近づいてくる。
冷たい汗がこめかみに流れたが、千鶴はそれを拭うこともせずに、ただ息を殺していた。
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