第一章

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(あ、あれは………!?) ふたり目が倒れる。 浪士を倒した男の、べっとりと返り血のついた羽織から目を上にやって、千鶴はぎょっとなった。 夜目にも白い髪、そして爛々(らんらん)と光を放つ目は血のように赤い。 男の仲間も同じいでたちだった。 (夜叉、鬼………ば、化けもの………?) 彼らは千鶴の知っているどんなものとも違うようだった。 狂ったように笑いながら、たった今、小路に転がったばかりの浪士の体を何度も何度も執拗(しつよう)に刀で突き刺している。 その残忍さに千鶴は凍りついたように動けなくなった。 ひとり残った浪士がもうひとりの白い髪の男へと大刀を繰り出し、抜き胴で斬りつけた。 血飛沫(ちしぶき)が噴き上がる。が、斬られた男は、 「ひ、ひひひ………」 笑い声をあげながら浪士にじりっと近寄った。 普通なら立っていることもできないはずだが、大して苦痛を感じているようにも見えない。 「くそ、なんでしなねぇんだよ!」
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