第一章

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「ひゃははははははっ!」 狂気の笑い声をたてながら、男は浪士を斬り捨てる。 その断末魔の声に千鶴が思わず耳を塞いだとき、 (っ!?) 赤い目がじろりと彼女を捕えた。 「あ………ああ………!」 逃げようとするが、千鶴は恐怖のあまりその場にへたり込んでしまう。 鉢金の下の赤い目がまっすぐに近づいてくる。 刃についた血糊(ちのり)をぺろりと舐め、笑い声をあげながら上段に構える―――。 (もうだめ!) ぎゅっと目を閉じた千鶴の耳に、肉を断つ鈍い音が聞こえた。 わけがわからず顔をあげると、千鶴に襲いかかろうとしていた男の左胸から刃の切っ先が突き出ている。 背後から心の臓をひと突きにされたのだ。 刀が引き抜かれると同時に白い髪の男は絶命し、ドウッと倒れた。
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