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「しょうがないわね」
そう言いながら、心中でお母さんがどんなことを考えているかは手に取るようにわかった。
貴重な外泊許可を得て見にきた妹の演奏発表会で、どうしてこんな思いをしなければならないのだろう。
これなら、搾りかすのようになって、背嚢に潰されそうになりながら走った昨日の行軍のほうが、幾分かマシだった。
『次は、田之倉三咲さんの演奏で……』
両親はほかの子の演奏も聴いていくようだった。私はこれ以上この場にいることは耐えられそうもなかったので、中座することにした。
逃げるように会場を飛び出し、座っているだけで体力を奪われるようなジメッとした梅雨空の下で、延々と携帯端末の『街撮り動物フォルダ』の整理をした。
私はなにをしているんだろう。
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