チューバはうたう

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『チューバはうたう』の解説をば。 肩書きから言うならばこの本は第23回太宰治賞受賞作で、それだけあって文章はレベルが高いように思います。文学作品あんまり読まないから相場しらんけど。 「チューバ」というのは楽器の名前で、演奏会とかで右の方に陣取る大きなラッパのことです。Google先生にお聞きすれば確実ですので是非。 チューバとはざっくり書くならば『大きい、重い、邪魔』の三拍子揃った楽器で、好んで吹き始める人はそうそういない楽器です。 そんなチューバをこよなく愛する女の人の生き様を描いたのがこの『チューバはうたう』なのです。 主人公の女性は中学校の吹奏楽部で「背が高い」という理由だけでチューバを担当することになり、以後その楽器を趣味として人生を歩んでいくことになります。 その「チューバ」という趣味に付随してくるのが「なぜそんな楽器を吹いているのか」という周囲の人間の目です。楽器を吹くというのならフルートとかアルトサックスのような、もっと良いのがあるはずなのに、よりにもよって何故「チューバ」なのかという、迷惑以外の何でもない目に晒されるのです。 この話のおおきなテーマは「他人から理解されない何かを持った人の生き方」であると思います。 それはチューバのみならず、所謂オタク趣味であったり、爬虫類を育てることであったりする訳です。小説を書くと言うのはどうでしょう? どっちでもいいや。 とにかく、この話はそんな趣味を持つ人達に1つの答えを示してくれていると思います。 主人公の女性もそんな目線に身を晒しつつ、適当に誤魔化したり、時に軽蔑したりして、逞しくチューバを吹いていきます。彼女はシニカルな人間ながら、チューバを吹く時は凄く楽しそうに吹くんです。特に中学時代の練習は一読の価値あり。 なにより、自分自身がチューバを趣味としているということもあって、共感できることも出来ない部分もひっくるめて、大好きな本なのです。特に楽器を吹いている人にオススメしたいです。
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