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「空海。行くよ」
「ああ。準備万端だ」
赤黒いローブをすっぽりと頭まで被っている人物ともう一人、晴れた青空のようなローブを同じくすっぽりと頭まで被っている二人組の魔導士がいた。
まさに今、その二人の魔導師は数え切れない程の魔物の軍勢を相手にしていた。
その魔物の軍勢は皆、青い瞳をギラギラとさせ、目の前にいる獲物を追い詰める。
「そっちは任せたよ、空海」
「ああ、任せろ。狂華」
背中を合わせて一瞬足りとも気を抜かない二人の魔導師はお互いに口角を上げ、魔物達に向き合いながら笑うと、一気に突っ込んだ。
「オラオラオラオラ!!」
「ふっ…はっ…!【三つ巴】!」
恐らく15、6の歳の少女は、まるで早口言葉を言うかのように素早く呪文を詠唱すると、四方八方から生み出された三つのくねくねとした幹が魔物達を縛り上げた。
そしてどうするかと思えば、その三つの幹は縛り上げた魔物達を簡単に捻り潰した。
捻り潰された魔物達は、皮だった物と血の海と化し、辺り一体を血の臭いで充満させた。
「うっ…!き、狂華!?血…血ぃぃぃ!?」
「ほら、血だよ。気持ち悪いでしょう?」
「うっ……うわあああ!!【水激流】!!」
…戦場は空海と呼ばれた少年の魔法で幕を閉じた。
何があったのか簡略化すると、
狂華が血の海、作る。
↓
空海、確認する。驚く。
↓
水魔法で辺り一体を流し尽くす。
↓
現在に至る。
だ。
怒っている少年の隣で微笑んでいる少女が一人。
こちらの方は少年の発動した魔法に満足気に微笑み、避難していた為に上空からひらりと舞い降りた。
「やっぱり私の読み通り♪要らない魔力消費しなくて助かったわ♪」
「はぁ…はぁ…!全く…」
「帰るわよ~」
「お、おい!俺も連れて帰ってぇ~」
少女は少年の必死な頼みを足蹴し、一人でその場から消え去ると、少年は力尽きたのかその場で動かなくなった。
そんな彼らが今回のお話の主人公。
さあ、我がこゆリンワールドへお連れいたします―――
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