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電話の画面を見つめたまま、固まる私。
『あ!岸田くんっ!!』
小夜子のテンションが急に上がる。
『噂をすれば、なんとかってヤツね!ほら、電話!出てあげなよ』
『あ、うん…………』
ソファーに座って通話ボタンを押して、携帯を耳に当てた。
『も、もしもしっ』
「お疲れ、森下さ、今なにしてる?」
『今は小夜子と買い物して終わったから、今から帰るとこだけど。どうしたの?』
「もう帰るのか?なら今から飯でもどう? ほら、定休日くらいしか一緒に飯とか無理だろ?」
『ご、ご飯?今から?』
今は夜8時すぎ。
突然のお誘い、しかも岸田くんから。
時間は平気、なんだけど。
まだ小夜子と別れてないし…………
その時、小夜子の目がキラリと光った気がした。
「オレ、そっちいくし。って、あ、…………いきなり過ぎだよな…?」
電話の向こうから岸田くんの残念そうな声が聞こえた。
小夜子の顔を伺うと、目を輝かせて、行け行け行ってこい!チャンスチャンス!と小さな声で言ってる。
『小夜子も今から彼と会うみたいだし、ご飯行けるよ』
「まじ?やった!嬉しい!今どこにいんの?行くから教えて」
私がそう答えると、急に嬉しそうな声で話す岸田くんの姿が想像できて、笑ってしまった。
「電車に乗ったらメールするな」
『うん。じゃあ、駅の改札口で待ってる』
そう言って電話を切った。
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