密かな喜び

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『そうじゃなくてもそんなつもりにさせちゃえっ!あたしもう行くから。ゆっくりメイク直ししといで!』 『…ファンデーション、塗りなおすだけだよ』 『おばか!どーすんの、ちゅーとかそんな雰囲気になったら。アイラインよれちゃってたりしたら。至近距離になったら意外と見られるのよー』 なんてことを言うんですか、小夜子ちゃん。 しかも、おばか!二回目。 『な、ない!そんなのないっ!』 『いーから、ほら。もしかしたら手を繋ぐかもしんないでしょ?だから買った服はあたしが預かっといてあげる。ちゃんと直して、マスカラもっと塗って、可愛くなっといで』 やけに楽しそうな小夜子。 手を繋ぐなんて、そんな……。 とりあえず、メイク直ししよう。 『は、はいっ直してきます…………』 じゃーねー、と手を振って、私の分の紙袋まで持って、人ごみに紛れていった小夜子。 『本当だ、…………アイラインよれちゃってるかも』 ヨレてるのは、見られたくない。 って、ちゅー、なんてしないしっ! 選じゃあるまいし。 というか、岸田くんは選みたいな野蛮で自分勝手で強引じゃないから、そんなことしてくる人じゃないしっ。 とりあえず、岸田くんが私をそういう対象になんてしてないんだから、百歩譲ってもちゅーとかありえないよ。 『…………』 服、変じゃないかな………… 。
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