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こくん、と頷いて岸田くんの言葉を待った。
『俺さ、…………社員になった』
社員って、正社員のことだよね?
『そうなんだっ!おめでとう!って社員……って…どこ、で…?』
『もちろんISAKIで。この話、2年前から決まってたことで、誰にも言ってなかったんだけど。コレ伊佐木さんとの約束でさ』
『決まってたの?約束?』
驚きの報告に私は首を傾げた。
『そう。2年前にも言われたんだよ、社員にならないかって。でも俺は金貯めて2年間海外行くってずっと決めてたし、やりたいこともあるし、まだ勉強したいから、今やらないと後悔するからまだ社員にはなれないって伝えたんだ。そしたら2年して日本に戻ってきた時、またここに戻ってきてくれるならずっと待ってるって伊佐木さんに言われた』
『帰ってきて悩まなかったって言ったら嘘になるけど、やっぱりオレ、伊佐木さんスゲー好きだから。出発の前日なんかどーしてもっていうから伊佐木さんの船で釣り行ったし。あの人、俺がいなくなるのが寂しくて釣りしながらずっとジメジメしてたんだよ。そしたらめちゃくちゃデカいブリが釣れたから涙吹っ飛んでた』
2年前を思い出してるのか、ケラケラ笑う岸田くん。
伊佐木さん、めっちゃ寂しかったんだ…………。
私たちにはそんなとこ見せなかったのに。
2人のその光景を想像したら面白くて笑ってしまった。
『この前、俺伊佐木さんと話があるから残るって言ってだろ?この話してたわけ。あと、のちのち俺にあそこ任せて2号店出すんだと』
『に、二号店…………!?』
『帰ってきて早々見習い店長だよ。びっくりだわ』
『でも店長とかすごいよ!岸田くんなら絶対うまくいくっ』
『ま、のちのちな。つか森下、お前辞めんなよ?』
『私は辞めないよー。辞めたら生活困っちゃうし。なにより辞めれないのは伊佐木さんの海老フライ美味しいからだけど』
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