密かな喜び

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『今度の定休日、予定無かったらまたご飯行こっか。美味しいとこ、探しとく』 『……うん』 なんだか、岸田くんに女の子扱いされるのが、こんなにもこそばゆいなんて。 ううん、良く思い出せば前も女の子扱いはしてくれてた。 バイト帰りにたまにこうやって、送ってくれてた。 嬉しかったのを思い出す。 手は繋いではなかったけど。 恋愛対象かどうかは別にして、岸田くんのことは好き、人として好き。 優しいし、頼りになるし、しっかり責任持って仕事してるとこも尊敬する。 それに私のことを解っててくれる。 それはずっとずっと前から思ってる。 私が慣れてないだけで、2年も会っていなかったことなんて、わからないくらい、前と同じなんだ。 私達の間には、本当に2年もの空白という時間は空いていたんだろうか。 岸田くんが相談してくれた時、本当は素直に喜べなかった。 いなくなった時、辛かった。 応援してあげるべきことなのに、もう会えないんだってことを受け止められなかった。 いつの間にか、寂しさは薄れて行ったけど。 でも、何にも無かったみたいに前みたいに解り合えてる。 2年前と、今現在は違うのに。 過去に戻ったみたいに、心があったかくなる。 もし、こんな人が彼氏なら、幸せなんだろうな。 素直にそう思った。 ドキドキするのは、お酒のせい? ねぇ、岸田くんはどういうつもりなの? 森下に手を出すのに4年もかかったなんてネタ、って言ってたのに。 あれはどういう意味なの?? 手を繋ぐのが手を出すって意味じゃないのは解ってる。 手を繋いで、照れるのはどういう意味なの? こうやって送ってくれるのは、どうしてなの? 私は岸田くんにとって、どういう存在なの? 疑問ばかりが浮かんだ。
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