密かな喜び

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携帯が震えて、のろのろとバッグの中を探る。 岸田くんからのメール。 今日、実はかなり焦ってた。 仕事の話だけするつもりだったんだよ。 好きとかまだ言うつもりじゃなかったんだけど、ほんと、ずっと言いたくて。 なんか最初から落ち着かなくて、いきなり手とか握ってゴメン。 森下が返事くれる時までゆっくり待つし、ちょっとオレのこと、考えてみて。 おやすみ。 焦って、たの…………。 確かに何か、おかしいなって思ってたけど。 手を握ってゴメンって、何で謝るの。 ふふっ、と笑ってしまった。 選なんか手を握ってもキスしても謝ったりなんてしないよ。 っ、………なんで、あいつのことなんか思い出してんの、私!! なんで…………おかしいよ。 悩んでるのは岸田くんのことなのに。 もつれて絡んで、解こうとすればするほど、解けなくなっていく糸みたいに、私の頭の中は一気にもやもやしていた。 携帯がまた震える。 小夜子からの電話だった。
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