14383人が本棚に入れています
本棚に追加
黒の学ランを羽織り、シャツのボタンは全開。その上から意味を為していなく、加えてだらしなくネクタイを締めており、ズボンは左右違う長さに裾を捲っている。
そして。
右顔面を覆う、黒く無骨な眼帯に、頭上に鎮座する光り輝く金の王冠。左目の下には薄い隈が出来ているが整った顔立ち。
―――――ああ。
服こそ多少は違えど、前世と何一つ変わらないその姿に目を細める。
俺の目の前で小首を傾げているこの少年は、正真正銘俺の知っている《喜多村皇紀》の生まれ変わりだ。
「…………」
俺は、無言で目を伏せた。
―――――そう、ここにいるのは、俺が殺してしまった皇紀の生まれ変わりなのだ。
生温い風が吹く。肌に纏わり付き、じっとりと汗ばませるその風が気持ち悪くて、俺は身動ぎをした。
「じゃあ、僕はこれで……」
素っ気なく返事を返し、そそくさとその場から立ち去ろうとする。
購買に行き、パンを購入し、賑やかな教室の中、席に着き一人切りの昼食を済ます。普段なら僅かな寂寥を感じるその行為を、今は切望していた。
早く、ここから立ち去りたい。
最初のコメントを投稿しよう!