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殴り飛ばされた。
見慣れて「いた」日本庭園をバウンドし、塀に叩き付けられた朔夜がそう認識するまで、僅かなタイムラグがあった。
「かは……っ!」
そして、拳を振るった人物は、打ち付けた背中の痛みに身を震わせたその一瞬の隙を逃すべくもない。
「死ね」
淡々とした言葉と共に、情け容赦のない拳が打ち出された。恐るべし速度で迫り来る拳を見て回避は不可能と悟ってしまい、朔夜は固く目を閉じた。
拳圧が頬を撫で――しかし、それ以上の衝撃は訪れなかった。
不思議に思い、そろりと薄目を開けてみる。先ず始めに眼前に突き付けられた拳が視界に入り、そして、
「……ユウヤ、久しぶり」
別の手がその腕を横から掴み、止めていた。一つではない、拳を拘束する手は、三つあった。
「……久しぶりだね」
拳を押さえられたまま、知らない表情で微笑む親友だった少年に、朔夜の思考は更に混迷した。
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