嵐を呼ぶ山田

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「祐也がって、どういう意味だ! お前は、お前は一体なんなんだ!?」 焦慮に駈られ、朔夜は叫んだ。 そこまでならまだよかっただろう。ユウヤも心底軽蔑したような面持ちで朔夜を眇める「だけ」で済んでいた。 しかし、人間とは愚かな生き物である。「主人公」である朔夜もそれは例外ではない。 朔夜は己を差し置いて膨大なストーリーが展開されていることに気付き、苛立ちを感じた。実にくだらない、些細なプライドである。 そのプライドが、朔夜を愚かな行動に駆り立てた。 「全部、お前のせいなのか……?」 震えた声で、朔夜は問うた。 ―――――分からない。分からない。俺に分からないなら、分かるようにしてしまえばいい。 明確な意思となったわけではない。だが、この感情は確かに朔夜の心の隅に居座り、毒を注ぎ込んだ。 毒によって麻痺した心は、愚案を躊躇いもなく吐き出す。 「全部、お前のせいだ! 祐也が苦しんでるのも、俺達があんな目にあったのも、お前のせいだ! そうに決まってる!」 そして、 「祐也から出ていけ! この、化け物!」 朔夜は決定的な一言を吐き出してしまった。
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