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朔夜がふと気が付いた時には、文字通り目と鼻の先に拳が迫っていた。
そして、衝突。
「あぐッ!?」
凄まじい衝撃に脳を揺さぶられ、情けない声が勝手に出た。拳の威力はそれだけでは収まらず、朔夜の体が宙を舞う。
そして地面に墜落し、ゴム毬のように弾みながら後方にあった池に落ちた。
「うああ……っ!」
喘ぐようにして顔を水面にだすと、髪を鷲掴みにされたのだろうか。頭皮が引っ張られ、鈍い痛みを伝える。
ここで、朔夜は漸く薄目を開ける。その目に飛び込んできたのは―――――
「……お前は、またそうやって繰り返すんだね」
右目から涙を流しながら、侮蔑の視線を向けてくるユウヤの姿が。
「愚か……ほんと、人間って愚劣だよ」
髪から伝う水滴が目に入り、朔夜の視界は妙に歪んで見辛かった。
髪を引っ張られ、ぐいっと顔を上に向かされる。そのまま、強く頬を張られた。
「ねぇ、この涙が、一体なんだか分かってるの?」
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