嵐を呼ぶ山田

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ざりっざりっと靴音をたてて神が近付いてくる。無言で、笑顔で、表情を固定して。 それは、ユウヤにとってかなり恐ろしい光景だったようだ。 「う…………」 顔をひきつらせ、神と一定の距離を保つべくじりじりと後退していく。そして、遂に耐えきれなくなったのか、 「……うわああああん!めふぃすと、たすけてえええ!」 「よし、こい!」 ガシッと音が聞こえそうな勢いで、近くにいたメフィストに抱き着いた。 「役得役得」 「おい、ズルいぞメフィスト!俺もユウヤを抱っこするさせてください!」 ニヤニヤと笑っているメフィストに、レヴィが怒ったように頼み込む。 「やーだね。というか、なんかお前が言うと変態臭いな」 「犯罪臭がするのだー」 「……ちょっと、ぼくもレヴィにはあまり抱き着きたくないかも」 「なん……だと!?」 メフィストとベルの二人に変態呼ばわりされ、ユウヤから止めの一言を食らい、レヴィはガクリと項垂れた。その目の端で光ったモノがなんなのかは彼の沽券に関わることなので、決して涙とは言わないでおこう。
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