14383人が本棚に入れています
本棚に追加
急く気持ちを抑え、必死に平静を保ちながら足を踏み出す。
「なぁ、如月」
しかし、最初の一歩目が地面に着くか着かないか、というところで呼び止められた。
大きく跳ねて鼓動のペースを増やした心臓。俺は緊張で額にうっすらと汗をかきながらも、必死に震えを抑え、平坦な声で返答する。
「……何ですか?」
奮闘虚しく、たったそれだけしかまともに発することが出来なかった。
しっかりしろ!動揺するな!
胸中で叱咤する。しかし、緊張のせいか未だに鼓動のペースは速いままだ。
「あのさ、お前ってさ……」
そんな俺の状態には当然気付くことなく、皇紀は話を続ける。
今まで、皇紀は俺を見ても何の反応も示さなかった。故に記憶は持っていないものだと思っていたが……もしも、今、皇紀が話そうとしている事が俺の予想通りだったら―――――
歓喜と恐怖が混じり合う。恐々とし背筋が凍っているのか、胸が期待で弾んでいるのか、または、その両方なのか。自分の心が分からなくなる。
そして、
「如月って……」
くきゅるるうぅぅぅぅぅ!
……皇紀の話を遮るように、俺の胃が情けない悲鳴を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!