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「てかさ、どうせ俺達と一緒にいることで目立ちたくないから、とかだろ?」
「う……い、いえ、そんなことありませんよっ!」
実際、メフィストが言うニュアンスとは微妙に違う。慌てて否定すれば、メフィストはニコっと爽やかに笑った。
「なら、なんも問題ないよな?忘れ物したんなら他のクラスのやつらに借りればいいんだし?ほら、行くぞー」
「う、わ……っ」
ぐいっと腕を引かれて、体が前のめりに傾く。思わず足を踏み出せば、
「……学校到着、だな」
メフィストの静かな呟きと共に、俺の足は校門を跨いでいた。
「またこうやって祐也と登校できるのが嬉しい。今、凄く、俺達は幸せなんだ」
前方の整った顔が、くしゃりと歪む。
「だからさ、ちゃんと俺達と向き合ってくれよ。じゃないとさ―――――」
そこで言葉を区切ると、メフィストは顔を俯けた。さらりと流れた前髪が顔を隠し、表情が分からなくなる。
「ま、いいや」
再び露となったその表情は、いつも通り後ろ暗いものを感じさせない笑顔だった。
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