嵐を呼ぶ山田

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一足教室へと踏み込めば、途端に心地のよいような煩わしいような微妙な喧騒に包まれる。 「…………」 俺は無言で生ぬるい空気を甘受しながら自席へと向かった。 学校の教室特有の大きな窓から降り注ぐ曇り空越しの光を浴び、舞い込んでくる湿った風を感じ、やけに穏やかな表情で席に着き、そして――――― 「……はあ」 うわああああああ!!!!兎丸と亮太のことをすっかり忘れていたのだが!!どうしよう!!どうすればいい!!!? 俺は、酷く動揺した内心を必死に抑え込む為に机にうつ伏せた。それでも堪えきれずに、小さく溜め息が漏れてしまう。 『うわー。なんか、あれだね……うわー』 お前は黙ってろ!! 『そんなに怒らないでよ……たしかに、今朝はぼくが悪かったけど、昨日の兎丸くん達のことはぼくは関係無いでしょ?だって、ぼくはフィリアちゃんを前にキョドってる祐也を見て笑ってただけだし』 笑いを含んだ軽やかな声が、比喩などではなく、文字通り心に響く。 …………この引きニート、河原かサバンナに簀巻きにして置き去りにしたいのだが。切実に。この際誰でもいい。腐れ塵王子でも、皇紀でもいい。誰かいい案はないか?
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