嵐を呼ぶ山田

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「……僕も男です。自尊心に邪魔をされて飲み込めない不服だって、あります」 「ふぅん……ま、そういうことにしとこうか」 なんとか言い返せば、メフィストは含みのある言葉を最後に追求を飲み込んだ。 「あ、そうだ。話が逸れてたけどさ、名前呼びを拒否ったら、さっきの皇紀みたいに容赦なく殴るからな?」 「メフィスト、もうちょい下……んっ、違う。もうちょっと右……あ、だから、下だって……そこ、気持ちい……んんっ」 「だーかーら、皇紀うっせえよ」 「ふぐっ!?」 いつのまにか踏みつけが甘くなっていたのか、指圧(足だが)のようになっていたらしい。 よほど気持ちいいのか、マッサージをされる時お決まりの変な声を漏らして催促する皇紀を思いっきり踏みつけると、メフィストは足を下ろした。 「とにかく、こうなりたくなかったら名前呼びな?……それに、もしも俺の目の前にいる祐也が何も知らないのなら、こうされてまで名前呼びを拒否する理由なんてないだろ?」 上履きを履き、とんとんと爪先で床を蹴りながら俺を見て笑うメフィスト……むぅ。反論が、思い付かない。
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