嵐を呼ぶ山田

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……あっ! 飛び出てきた言葉にはっとし、咄嗟に口元を手で抑える―― 「お、やっと言ったな! ちび祐也っ!」 「誰がちびだっっ!!!!」 ……抑え切れなかった。 「さっきから我慢していれば好き放題言って……覚悟は出来ているんだろうな!!?」 御しきれない感情が口を動かし、俺の意思とは裏腹に言葉を紡いでいく。 不思議なことに、それは僅かな爽快感を伴っていた。 つい今しがた俺が口走った言葉の通り、俺は、昨日からずっと我慢ばかりしてきた。 昨日以前も、ずっと、ずっと。我慢ばかりしてきた。 弾けた感情のせいとはいえ、その忌々しい呪縛から限定的に解き放たれた今、俺は、無防備にも程がある心を晒しているのだ。 「くそっ!」 混乱した感情のるつぼに落ちた俺は、拳を握り締め、薄笑いを浮かべたメフィストを睨み付ける。 「昨日だってそうだ、急に転校なんてしてきて……俺が、俺がっ! どれほど…………っ!」 ――これは、だめだ。 言ってはいけない。 頭の隅で冷静な声が囁く――しかし、今の俺に意見を届けるには、小さな囁き程度では到底無謀だった。 警告を押し潰した莫大な感情に声がいらえ、そして。
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