嵐を呼ぶ山田

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いつのまにか、教室はシンと静まりかえっていた。 「…………」 声を潜めたクラスメートたちは、奇異なものを見る目で俺とメフィスト――それと、未だに床に伏したままの皇紀を注視している。 あからさまな視線はあまり気持ちのよいものではないが……当然の事として、甘んじて受けるしかない。この平穏な世界では、誰かが声を荒げるだけで異常へと昇華されてしまうのだから。 「……寂しかった?」 静謐とはまた違った沈黙に、ぽつりとメフィストの声が響く。 「あ…………」 俺は既に、水を打ったような空間に頭を冷やされていた。 失っていた自戒が再び俺を拘束し、戒められた声帯からは掠れたあえかな声が漏れる。 「いや、その、今のは……」 愚直に放たれた叫びは、最早取り消すことも出来ない。 誤魔化しようがない。 抗えない事実に萎縮した心はすっかり打ちのめされ、俺は途方に暮れる。どうしよう、どうすれば――! 「……祐也、そこどいて」
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