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そもそも、俺は皇紀と話す資格すらないのだ。笑顔なんて、以ての他だ。
「……すみません、僕はこれで……」
軽く頭を下げ、急いで踵を返す。中庭の粗いアスファルトが靴を削った音がしたが、気にせずにこの場からの脱出を試みる。
「はは……え!?あ、ちょっおい!腹減ってんだろ!?」
脱出失敗。腕を掴まれて強制的に歩を止められた俺は、振り向いてキッと皇紀を睨む。
「喜多村さん、放してください!僕は、お腹減ってなんか……」
くきゅぅぅううぅうぅうるるぅ
ここで、本日一番の悲鳴が上がった。やはり、急に動いたのがいけなかったのだろうか……。
「お腹減ってなんか……何だよ?」
再び赤面した俺を見て、皇紀はニヤリと懐かしい笑みを浮かべた。
「ほら、オレのパンやるからさ。それに今更行ったって購買にパンは残ってないと思うぜぇー?」
きゅるるぅ
続いたその台詞には、俺の代わりに胃が返事をした。もう嫌だ、いつから俺の胃は人工知能を搭載したのだ。
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