嵐を呼ぶ山田

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「……れ、レン?」 到底信じがたい光景を確かめるべく絞り出した声は、情けなく動揺に震えていた。 「…………」 ぴくり、と俺を庇うようにして立つレンの肩が震える。 そして、銀の絹糸のような髪が揺れ、それまで見えなかった顔が俺の方へ向き直り―― 「あ……え、えっと、これは! そのっ……祐也のためなんかじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよね、怪我はない!!?」 ……また、なんとも古典的な反応をするものだな。 「え……あ、怪我はないが……」 「ならよかった……わけないし! 全然よくなんかないんだから! 祐也のばか、心配させないでよ! ばかっ! またあとでね!!」 苦笑を押し殺して答えれば、レンは俺以上の動揺を露にして、そして。物凄い勢いで教室から出ていった。
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