嵐を呼ぶ山田

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「…………」 過ぎ去った嵐の余韻に、教室にいる誰もが言葉を失していた。 「席に着けー。HR始め……なんだ、やけに静かだな?」 静まり返った教室に足を踏み入れ、教卓に出席簿やらを置いた担任が不思議そうに視線を巡らせ、ようやく、その場の硬直が解けた。 「……はあ」 ざわざわと先程の事件について論じるクラスメートを横目に、渦中の人物である俺は静かに溜め息を吐いた。 「祐也、また後でな」 「なあなあ、メフィスト急に老けてね?」 「皇紀殺す」 とりとめのない言葉を交わし、メフィストと皇紀も各々の席に戻っていく。 「……なんだろうな」 ぽつりと呟き、硬い椅子に座った。頬杖を付き、ぼんやりと教卓に立つ教師を見詰める。 「今日の体育、テニス選択者は――」 俺の後背は無人のまま、何でもない日常が始まった。
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