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「誰かさんに邪魔をされたせいで言い切れなかったが、俺はこの世界の家族も、とても大切に思っている。現在の如月家継承者は俺だ。それを丸投げして、武の世界で生きていくことを、様々な歴史のある如月家のすべてを姉さんに任せるのは酷だろう」
――そう。如月家、そして"繋がり"のある家々は、様々な歴史を持っている。
自然と眉間に皺が寄るのを感じながら、それでも口を挟ませず話を続ける。
「帰るまで、少しだけ時間をくれないか。俺の代わりの継承者を見付け、これからの姉さんたちの生活の基盤をしっかりと築くまでの時間を」
生半可なことではないだろう。
代わりの継承者などと言っているが、明け透けに言ってしまえばスケープゴートだ。姉さんに辛い思いをさせたくないあまりに、俺は赤の他人――たしかにこの世界で生きている、俺が知らないだけの人を犠牲にしようとしている。
「いや、別にそれくらいは待てるけどよ……な、レン」
「祐也の申請を受け入れる代わりに毎晩祐也といっしょに寝れる権利を求める」
「バーロー神が…いや、祐也が許しても俺が許さん」
俺の葛藤を感じたのだろう。そして、この場では理由を話さないであろうことも。困ったように笑ったメフィストに、ツキリと胸が痛んだ。
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