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暮れ行く陽の光が拡散し、オレンジに染まりつつある町並み。
昼間は姿を潜めていた影が、闇が徐々にアスファルトの地面を侵食して行く。
幾年もの年月が経っている事から、建物の外観は以前地球にいた頃の物とは多少違うものの、やはりその光景は俺の胸を温め、郷愁の念を掻き立てる。
しかし、
「……はぁ」
ぐきゅうぅるるるぅぅぅぅう
悲鳴を上げ続ける胃を抑える。今の俺の心中は、郷愁の念よりも強い空腹感に支配されていた。
結局、昼食を取る最大のチャンスである昼休みを過ぎてから、俺は何も口にしていなかった。
授業間の小休憩では運悪く移動やら何やらで食べる暇がなく、更に、皇紀からもらった焼きそばパンは、俺をイジメている二人組―――――合田亮太と兎々木兎丸に没収されてしまった。
「はぁ」
またしても大きな溜め息を吐く。夕暮れの住宅街は閑散としており、哀愁漂うその姿を見るものは一人としていない―――――と思いきや。
『祐也、なんであの二人を血祭りに上げないの?』
不意に、出所の不明な声が俺に問い掛けてきた。
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