よいこのHow to 如月家☆

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兎丸は細く息を吐き、背筋を反らして伸びをした。反動で深くソファーに沈み込む。 合議、というしかつめらしい呼び名にそぐわず、睦月家は瀟洒な屋敷だった。ここ――待機に使われている部屋にも置かれている質の良い家具は、使用する者を絶妙な柔らかさで受け止めている。 「別に、気にしてねえよ。言われんのは慣れてる」 「どういうことだ?」 脇に置いてあったクッションを抱え込みもふもふと堪能している兎丸の横顔は、どうでもいいと言わんばかりに何の感情も浮かべていない。 「どいつもこいつも、わざとらしく言うんだよ。兎々木家の当主様は随分お若いんですねー、ああ、まだ次期当主様でしたか。失礼致しましたぁー」 兎丸はつまらなさそうに続ける。 「――お父様とお兄様は、数年前にお亡くなりになったんですよね、あれは酷い事件でした……って。同じ事しか言わねぇコピペ人間共が、うっせえんだっつーの」 改めて兎丸の横顔を見つめれば、頬から顎にかけての線がいとけなさを残した丸みを帯びていることに気付く。何を思い出しているのか、茫洋とした瞳は生硬な気配を漂わせている。 ……そうか。こいつも背負うものがあるのか。 『……嫌な事件だったね……』 おい富竹ユウヤ、この雰囲気に無理にネタを突っ込んでくるな!
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