14383人が本棚に入れています
本棚に追加
ここで一つの疑問が浮上する。そもそも、何故ユウヤは前世で俺が幼い頃に身体の所有権を奪い取らなかったのだろうか。
正直、前世でユウヤから身体の所有権を辛うじて取り返せたのは、俺に仲間という存在がいたおかげだ。
しかも、それでいて尚所有権を取り戻せたのは奇跡に近かったのだ。仲間などいなかった幼い頃に乗っ取られていたら一堪りもなかっただろう。
そう思い、以前―――――俺が五歳程の時に、ユウヤに訊いてみた事があった。すると、ユウヤは暫しの沈黙の後にポツリポツリと話し出した。
『祐也の……というか、ぼくのチカラは、意思力―――――想いのチカラなんだ。望めば“死人を蘇せる”事だって出来る。だから、ぼくは依代になり、必然的にぼくのチカラを行使する事が出来る祐也には“死人は蘇らない”という事が当たり前になるまで、思考の基盤に根付くまで、一般人として生きてもらったんだ。もしも、ぼくが勇者を殺した後に生き返らせられたら全部が水の泡になっちゃうからね』
まぁ、失敗しちゃったけどね。覇気のない声でそう言っていたユウヤ。姿は今と変わらず見えなかったが、その声には絶望と諦めが巣食っていた。
それから、約十年。
『それより、祐也。いい加減渾名か何か決めようよ。二人とも同じ読みじゃん』
「よし、ならお前は今から《祐也二号機》だ。なかなか格好いい渾名だろう?」
『ごめん、ぼく、今まで通りでいいや。というか、一応ぼくの方が早く存在してた……つまり、オリジナルって言うに相応しい存在なんだからね?』
「では、《ユウヤ・オリジン》でどうだ」
『祐也の発想力に驚愕。なんでそうなるのさ』
俺達は、和やかに談笑するくらいまでには打ち解ける事が出来ていた。
最初のコメントを投稿しよう!