最初は説明からだな

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姉さんは俺に向き直ると、手を後ろで組んでぐっと身体を前に傾けた。 「ゆーちゃん、ゆーちゃん!先ずはお風呂にする?それともご飯にする?そ、れ、と、も……お稽古にする?」 続けて、 「なーんちゃって!ゆーちゃんと新婚さんごっこしてみちゃった……えへへっ!」 と、満面の笑みで言われる。 俺を相手にする時はこんな甘い雰囲気を醸し出すことが多々あるのだが、しかし、そこは如月流の師範代。 縁側に差し掛かると、丁度帰宅する所なのか、門下生の集団と擦れ違った。 「あ、師範代!それと祐也も!こんばんわー!!」 姉さんに頭を下げ、その後に俺にちらりと視線を向けてから挨拶をする男達。 姉さんは、そんな彼等を見て、重々しく頷いた。 「うむ、今日も鍛練ご苦労だったな。充分に休養を取るがよい」 先程の柔らかな雰囲気とは打って代わり、硬質な響きを持つ姉さんの言葉。 「おい、やっぱ師範代ってカッケェよなぁ……」 「強く、凛々しい女性って憧れるよなぁ……」 そんな姉さんにキラキラとした熱い視線を向ける門下生達。 そう、姉さんは俺―――――家族の前以外だと《鬼の師範代》へとたちまちに変身するのだ。
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