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ティッシュの箱を引き寄せ屈み、畳に散らばる細かい破片をティッシュにくるんでいく―――――
「ゆーちゃん」
「うわぁ!?」
不意に静かな部屋に響いた呟き。驚いた俺は、堪らずに間抜けな声を出してしまった。
慌てて声のした方向へと視線を向けると、そこには姉さんが立っていた。俯いているせいで、表情は見えない。
俺は、顔を引き攣らせる。
姉さんの纏う雰囲気は、波紋の無い湖面のように穏やかでありながら、しかし、爆発の寸前のようにエネルギーを内包しているように思える。
―――――これは、ヤバイな。というか、どこかで見たことがあるような……
「な、無凪姉さん……?」
見たことのある雰囲気に引き攣りがらも、おずおずと問い掛ける。
「ゆーちゃん」
再度俺の名前を呼び、姉さんは俯けていた顔を上げた。
姉さんは、笑みを浮かべて整った顔を更に美しくしていた。
しかし、俺は気付いてしまった。
姉さんの目が笑っていないことに。
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