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「ご、ごめんねゆーちゃん」
落ち込む俺を見て、姉さんは顔の前で両手を合わせて申し訳なさそうに謝ってくる。
心底申し訳なさそうに、不安に揺れる瞳と目が合う。嘆息をもう一度だけ。そして、
「……まったく、姉さんは。次からはゲームを壊さないようにしてくれ」
「う、うんっ!」
「分かったのなら、いい」
こういう甘い所がいけないのかもしれない、と思いつつも、俺はぱっと笑みを浮かべて華やいだ雰囲気を纏った姉さんに微笑みかけた。
携帯ゲーム機の残骸を燃えないごみ置き場に置き、風呂にも入り終わった俺は柔らかな布団に寝転んでいた。
「はぁ、暑い……」
滲む汗が寝間着用の着流しを濡らす。
初夏の夜は蒸し暑く、ぬるりとした空気が全身に纏わりつくのがどうしようもなく不快で、俺は襖を開放し外からの風を取り入れる事にする。
無風のせいで流れない夜気にやきもきとしながらも、しかし、確かに襖を開けないよりかはマシな状況に妥協する。
薄い掛布団を足で蹴飛ばして身体から離しつつ、俺は寝返りをした。
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