嵐を呼ぶ山田

4/106
前へ
/276ページ
次へ
皇紀の事を、二人は覚えているのか? 二人の事を、皇紀は覚えているのか? 二人が口を開くまでの数瞬が、まるで永遠に続くかのような錯覚に囚われる。 しかし、無情にも時は流れるものだ。 ついに、ゆっくりとメフィストの薄く形の良い唇が開いた。ニヤリと笑みの形になる。そして――――― 「よっす皇紀!久しぶりだな?」 片手を上げて軽い笑みを浮かべ、メフィストはあまりにも自然に挨拶をした。そう、まるで旧知の知り合いに対してするかのように軽い、軽すぎる挨拶を。 「……な」 驚愕のせいで、微かに開いた唇からほとんどが吐息の様な掠れた声が漏れた。メフィストは、皇紀の事を覚えている?ということは、フィリアも? 疑惑からフィリアを凝視すれば、その整った可愛らしい顔には微笑が浮かべられていた。 可愛い……はっ!そうではなくて!! 不審に思われない程度に緩く頭を振って、色気付いた思考を必死に振り払う。これもすべてフィリアが可愛いのがいけないのだ……っ!!
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14383人が本棚に入れています
本棚に追加