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「す……」
すまなかった、と口にしようとして気付く。
ここで、肯定していいのか。俺が関われば、メフィストは、皇紀は、皆は、また―――――
今、メフィスト達は俺を迎え入れようと両手を広げて待っている状態だ。
親友を手にかけ、罪を犯し、髄まで汚れてしまった俺を、暖かく包み込もうとしてくれている。
それは、考えるだけで涙の滲むこれ以上のないハッピーエンドだ。
しかし、俺は、それを望んでいいのか?
俺は、またしても皆を不幸にしてしまわないのか?
弾むような期待と凍てつくような不安が鬩ぎ合い、胸中がぐちゃぐちゃに荒れていく。
『祐也、決めるのは祐也だよ。でも……ぼくは、今の環境なら、皆で穏やかに暮らせるかもしれない、って思う……ねぇ、祐也』
どうする?
ユウヤが、俺と同じく相反した感情に揺れる声で問い掛けてくる。俺は、その声を聞いて尚動けない。あまりに強い感情の鬩ぎ合いに、身体が硬直してしまっているのだ。
俺は……俺は、一体どうすれば―――――
『ぱぴぃ』
ぐちゃぐちゃに解れた感情と思考は過去を引き摺り出し、そして、拮抗が崩れた。
「……すみませんが、どちら様でしょうか?」
―――――俺はメフィストを、皆を拒絶することを選んだ。
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