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その後、我に返り己の職務を思い出した教師(三十九歳独身男)がその場を収め、そのまま授業へと突入。
幸い、メフィストとフィリアは俺から離れた所にそれぞれ座り、その後は大人しく授業を受けている。
どうやら二人は地球の授業を受けても問題ないようだ。
「……よかった」
授業間の小休憩にも特に何事もなく、四時間目の授業が終わろうとしている今、俺は安堵の息を吐いた。
「……おい、根暗君」
と、そこでタイミングを見計らったかのように、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。この声は……。
顔を隠していた前髪はスッキリとカットされてしまったため、今まで以上に表情に気を付けながらこっそりと振り返る。
すると、そこにいたのは気だるげに肘を着き、艶やかな黒髪を揺らす美少年。
「と、兎々木さん……な、なんですか……?」
「今日もパン買ってこい。オレはメロンパン、亮太はコロッケサンドな」
いつも通りの使いパシリを命令され、いつも通りおどおどしながら肯定する。
朝の出来事以外は、当たり障りのない風景だった。
「……ふぅ」
前に向き直った俺は、再度安堵の息を吐く。
―――――これが、嵐の前の静けさとは露知らずに。
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