嵐を呼ぶ山田

18/106
前へ
/276ページ
次へ
あぁ、これはダメだ。 「すみませんが、僕一人でも出来ることなので……わざわざ皆さんのお手を煩わせる必要はありません」 別に、兎丸を怒らせるのが恐ろしいわけではない。正直に言ってしまえば、ユウヤ、そして前世の力を受け継いでいる俺にとって、兎丸は脅威にはならないのだ。それこそ、左手の小指一本で気絶させられるほどの絶対的な力の差がある。それは、亮太も同じだ。 では、何故俺はこの二人組に大人しくイジメられているのか? 答えは、俺がイジメられれば、少なくとも周囲には影響がいかないからだ。 ―――――何せ、俺には今までイジメに巻き込むような友人もいなかったからな。 俺の瞳が、微かに自嘲の陰りを帯びる。 「何でだよ……っ!」 「お気遣いありがとうございます。では、僕はこれで……」 悔しげに、どこか悲しげに俺を睨み付ける様にして見てくるメフィストに微笑を見せて頭を下げてから、俺は前方に立ち塞がる皇紀とフィリアの隙間を通るようにして教室から出ていく。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14383人が本棚に入れています
本棚に追加