嵐を呼ぶ山田

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ピッタリとフィリアの身体が密着している為、自然と、モノクロに赤のスカーフがアクセントとなっているセーラー服が目に入る。 「ルクリファスさん……いい加減、離してくれませんか?もう逃げようとしませんから……」 「いーやっ!離さないわよ、ゆー君!」 そう、フィリアは、まるで抱き抱えるかのようにして俺の腕に自分の腕を組ませているのだ。 そのせいで、例えば、列が進む時。例えば、後ろの男性陣に呼ばれてフィリアが振り返る時。ことあるごとにフィリアの柔らかい身体が俺に当たるのだ。 それに、恐らくシャンプーの臭いだろうか甘い香りがふわふわと揺れる髪から常時漂ってくるのだから、堪らない。 「ゆー君顔赤いよー?」 「気のせいです」 あどけない表情で訊ねてくるフィリアに、精一杯の努力をして平坦な声で返事をする。 そのやり取りの間にも、俺の鼓動のビートは速まるばかりだ。 真っ赤に染まった顔で外方を向く。 とりあえず、何とかしてこの状態から脱出しなければ……俺の心臓が持たない。
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