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下駄箱で靴を履き替え、体育館のピロティ部分へと向かう。
途中、中庭を横切ったが素知らぬ顔をして歩けば、誰も俺を気にしなかった。
夏を迎えるか迎えないかの時期である今、じめじめとした温い風を肌に感じながら俺はピロティへと足を踏み入れた。
そこにいるのは、前方の床に座りべたりと学ランのズボンを汚している二人の少年。各々、大柄と小柄という正反対の体格をしている。
「おせーよ!」
ピロティの柱や壁に反響する怒号。びくりと大きく体を揺らす。
「す、すみません……!」
上擦った情けない声で謝れば、馬鹿にするようにふんと鼻を鳴らされる。
「おら、寄越せ」
「あ……」
手の中の袋を乱暴に奪われ、思わず声を出す。
しまった、俺の分のパンを別にしておくのを忘れていた。
「んだよ、文句でもあんのか?」
小さな声を聴き逃さなかった大柄な少年が、威嚇するように体を前へ傾けながら睨み付けてくる。
「あ、あの、僕のパンも中に……」
「あぁ、聞こえねーなぁ?もっとでけー声で喋ろよな」
「亮太、根暗クンには大きな声を出すなんて無理に決まってるだろ?相手がお前なら尚更だぜ?」
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