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やけに重たい目蓋を抉じ開ければ、ぼやけて歪んだ白い壁のようなものが見えた。
「…………」
無言で緩く頭を振れば、後頭部が柔らかい何かに擦れる感覚と、目もとを冷たい何かが流れる感覚がした。
―――――また、泣いていたのか。
「……ははっ」
己の女々しさに、乾いた笑いをあげる。何故俺はこんなに弱いのだろうな?ユウヤ。
『……ぼくは祐也は強いと思うけど。ぼくなんかよりも、ずっと』
―――――狂気に犯されたぼくなんかよりも。
「そんなことはないだろう。俺からしてみれば、ユウヤ、お前の方が強いぞ」
―――――狂気に飲み込まれた俺なんかよりも。
端から見れば独り言となる会話をし、目もとを拭う。すると、ぼやけていた視界が一気に鮮烈さを取り戻した。
俺がいるのは、静謐に満ちた白い空間。白いベッドと、俺の隣で眠るレン、ベッドの回りを囲う白いカーテンからして保健室だろう。
「……ふぁ」
上体を起こし、伸びをしながら欠伸をする。よく寝た…………って!
「何故レンがここにいる!?」
音のなかった保健室に、俺の叫びが響いた。
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