嵐を呼ぶ山田

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苦し気に顰められた眉の下、固く瞑られた目蓋から流れ出てくる涙を見て、胸がズキズキと痛む。 「ゆうや」 痛い。 「いっしょがいい」 心が痛い。 「ひとりはいやだ」 痛くて、堪らない。 「やめてくれ……っ!」 罪悪感に押し潰されそうになり、俺はベッドの上で膝をたてて座り、頭を抱える。 胸が痛い。辛い、苦しい、逃げ出したい。一度はあれだけ渇望した皆から、人の温もりから今は逃げ出したくて堪らない。 「はは、俺は臆病者だな……情けない。ほんと……情けない……」 弱くなっていく語尾と同時に、じわじわと視界が滲んでいく。そんな中、ある思考が俺を必死に追い立てる。 ―――――俺は罪深い。だが、この苦しみから逃げてはいけないのだ。これからも、俺は業を抱えて償い続けなくてはいけない。その為には、きっと――――― 「……え、うそ。ゆうや……?」 「おはよう……ございます」 ―――――この辛さから逃げてはいけない。これが、俺に出来る贖罪なのだから。
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