嵐を呼ぶ山田

38/106
前へ
/276ページ
次へ
銀の瞳を目一杯に開いて驚愕を露にしたレンに、戸惑いがちに笑みを見せる。 「えっと……どうして僕の名前を知ってるんですか? それと、どうしてあなたは僕と同じベッドに……?」 未だ涙を溢しながら俺を見つめるレンの瞳を、真っ直ぐに見詰める。一言一言、よそよそしい言葉がレンを傷付けていくのを感じながらも、罪悪感に心が押し潰され、苦しくなってもレンの揺れる瞳から目を離さない。 数瞬の間そうして目を合わせていれば、不意にレンが顔を俯けた。銀の美しい髪がはらりと顔にかかり、その表情を隠す。 「……な」 そのまま、レンは何かを呟いた。 「どうかしましたか?」 聞き取れなかったので、小首を傾げながら尋ねる。すると、 「……ふざけるなって言ったんだよっ!!」 レンは、激昂した。 俯けていた顔を勢いよく上げ、その表情を燃えるような怒りに染めて、悲鳴をあげるように叫ぶ。弾みで溜まっていた涙が零れ、キラキラと光を反射しながら舞い落ちる。 息を飲むような迫力。そして、その純粋な感情に染まった表情の美しさ。それらは見る者を通常ならば例外なく圧倒する。 ―――――通常なら、だが。 「えっと、その……な、なんで怒ってるんですか!? 僕、何かしましたか!?」 その叫びを聞いた俺は、冷静に演技を続行していた。 ―――――すまない。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14383人が本棚に入れています
本棚に追加