嵐を呼ぶ山田

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「ご、ごめんなさい……っ!」 心中で謝りながら、種類の違う謝罪を口にする。 嫌な言い方だが、こうしてレンが激昂するのは予想できていた。自惚れも大概にしろ、と自分自身に自嘲を向けながら俺は再度目の前の銀の瞳を直視する。 「ふざけるな……っ!」 ―――――すまない、レン。 「ふざけるなよ……っ!」 ―――――何度言っても足りない。レン、本当にすまない。 「なんでおれの許可なく一緒のベッドにいるのさ……っ!」 ――――すまな……え? 「……え?」 怒り心頭のレンが言い放った予想外の言葉に、一瞬演技もなにも忘れて呆ける。レンは、そんな俺を赤くなった顔で睨みながら尚も叫ぶ。 「早くどいてよ!」 どんっ!と強く突き飛ばされ、その勢いでベッドから転がり落ちる。 「……え?」 俺は、情けなく床に尻餅を着いたまま、ベッドの上から睨み付けてくるレンを見返した。 すると、レンはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。頭の隅の冷静な俺が相当お怒りのようだ、と混ぜ返すように囁く。 「なんでおれの許可なく一緒のベッドにいるんだよ……あーあ、最悪。気分悪い」 レンはバサバサと布団を直しながらぐちぐちと文句を言う。そして、俺に再度視線を向けた。 前世から変わらない、透き通った銀の瞳が慣れ親んだ笑みの形に変わる。 「おれ、祐也のこと嫌いだから」
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