嵐を呼ぶ山田

44/106
前へ
/276ページ
次へ
レンが寝ているかどうか、耳をそばだてて様子を探る。 「……は」 「…………?」 すると、何か声のようなものが聞こえてきて、俺は首を傾げた。一体、レンは何を喋っている? じりじりと摺り足でカーテンのすぐ傍……本当に、あと少しで身体が触れてしまうという位置にまで近寄る。そうして、再度耳を傾けた俺に聞こえてきたのは…… 「……ふふっ、ふふふあははははははっ!」 高らかな哄笑だった。 最早押し殺す気もないのか、笑い声は静まり返った保健室に響き渡る。 「あははははははははっ!祐也だ……本物の、祐也がいた……!!」 「……っ!?」 突然哄笑の中に名前が混じり、俺はビクリと身体を揺らした。 ―――――レンは、どうしてしまったのだろうか……? 一抹の不安が過る。レンの笑い声には、何か不吉なものを感じてしまう。俺が与えてしまった精神的なショックのせいでレンがおかしくなってしまったのなら、俺はどう償えばいいのだろうか……。 どんどんマイナスな方向へと思考が降下していく。 そして。どこか狂気を感じさせる声色で笑うレンは、気持ちを溢れさせるかのように言葉を溢れさせた。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14383人が本棚に入れています
本棚に追加