嵐を呼ぶ山田

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「…………」 まだまだ続くレンの言葉を最後まで聞かずに、俺は眼鏡もなにも忘れて、しかし音だけはたてないようにして保健室から緊急脱出した。 「はぁ……っ!」 放課後なのか、それとも授業中なのか。静まり返った廊下に出てそうっと扉を閉めた後、己の息が荒いことに気付いた。 動悸がする。息も苦しい。汗もかいている。まるで全力疾走をしたかのようだが、ただ一つ、身体は熱を持つどころか寒気がするほど冷えていた。ざざっ、と音をたてるほど急激に血の気が引いてしまったようだ。 「嘘、だよな……?」 小さく呟き、駄々を捏ねる幼子のように頭を振る。しかし、先程遭遇した事実は決して嘘などではなかった。 レンは、十五年経った今でもヤンブラのままなのだ。 しかも、先程レンが口走っていた言葉を踏まえると、新たな属性を身に付けている事が窺える。 『嬉しすぎてなんか恥ずかしくてさっきみたいに冷たい態度取っちゃった』『やっぱり祐也には笑ってほしいな』これらのフレーズは、所謂ツンデレキャラに当てはまる。つまり、レンは…… 「ヤンヤンツンツンでヤンツンとか……こんな新属性、要らない」 俺は、深い深い気持ち的にマリアナ海溝くらい深い溜め息を吐いた。 これから、どうすればいいのだろうか……。 『笑えばいいと思うよ』 「ちょっと黙れ」
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