嵐を呼ぶ山田

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とりあえず、眼鏡はレンが正気に戻って保健室から退散した後にこっそり取りに行くとして、 「今は何時かな……」 吐息に混ぜて、小さく呟いた。保健室の時計を見ればよかったのだが、生憎とそんな余裕は微塵もなかった。ああ、一切なかった。逃げるので必死だった。 「教室に戻ろうか……いや、やはり時間が分からないことには動けないな」 「今は三時五十分過ぎ、もう放課後だぞ」 「ん?ああ、すまない」 そうか、もう放課後だったのか……では、教室に戻って時間を潰せばいいか?レンは違うクラスのようだし、些か楽観的すぎる考えだが、メフィスト達もきっと帰宅しているだろう……。 そこまで考えて、俺ははたと思考を止めた。 ―――――今、俺は誰に時間を教えてもらった? 大変困ったことに、先程の声には聞き覚えがあった。そう、嫌と言うほどだ。 「…………」 ギギギ、と音がするような動きで首を声が聞こえてきた方へと動かす。たらりと冷や汗が額を伝った。
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